CBAと実践的能力の関連について
CBAと実際の日常生活場面での能力について、みなさんの意見を聞かせていただきたく投稿します。もともと一人暮らしをしていた方が高次脳機能障害を生じると、通常今後の自宅復帰が可能かどうか、議論が行われると思います。どのような状態であれば、自宅復帰が可能といえるのか判断が難しいことも多いのではないでしょうか。また、厳密にいえば難しいと感じられるケースでも、状況によって自宅復帰を選ぶ場合があります。こうした問題を考えるときにCBAは便利なのですが、CBAの得点と自宅退院可否の判断に、どのような基準が適切か、ということを考えることがあります。
以前経験した事例の自宅退院について、私はCBAで24点と評価し、自宅での1人暮らし可能と判断しました。医師から自宅復帰に必要な認知機能として、CBA24点は十分なのか、とたずねられました。私たちは、これまでのデータからFIM運動の点数とCBAの関係を調査し、屋外自立には27点、屋内自立には24点、セルフケア自立には21点、という値が目安となると考えてきました。27点くらいあると、かなり病前に近い状態に回復しており、大きな心配をせず1人暮らしを進めていくことができます。この方は24点でしたので、注意、記憶、判断などが十分でなくお一人で確実にできないこともあり、自宅退院に不安もありました。
一方、屋外練習で道に迷いかけることもありましたが何とか自力で目的地に到着できたこと、迷っても人に尋ねる力があること、などが観察され、環境適応力は高いと感じられました。また、回復が続いていて退院後にもう少し改善していくことが見込めること、協力してくれる支援者がいたこと、などの情報も合わせて総合的に、CBAが24点であっても退院後の1人暮らしが可能と考えられる根拠がありました。さらに、現在の社会情勢の中で、介護保険サービスを調整して、独居の自宅退院を拡大していくことも求められています。
基準となる点数を理解し判断に用いていくとともに、実際の行動をよく観察し、何ができ何ができていないか、どうしていくことができるかを考えていくことが重要であり、そのためにCBAをうまく使っていかれれば、と感じた事例でした。みなさんの現場での議論も聞かせていただければと思います。