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​担当者:森田 秋子・菱川 法和

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CBA日記

CBAが評価しているものとは何なのか?

 

 「CBAが評価しているものは、何なのか」ということについて、考えさせられる事例に出会ったので、記述してみたい。

 事例は退院後1年経過した、80代の大腿骨頸部骨折後の患者さまであった。若手PTが訪問リハに同行し、退院後の変化を確認させていただいた。

 「森田さん、よくなっていました!」というのが、彼の開口一番。独居で帰られたが、退院時は十分な能力を取り戻していたとはいえず、不安があった。認知面はMMSE23点、CBA23点、ADLは何とか自立であるが、ふらつきがあり屋外行動は十分自立とはいえない。買い物に行くことも含めた設定での退院で、介護保険サービスを頼り、何かあれば設定の変更を考えなければならないことも視野に入っていた。それが1年後、元気に生き生きと地域で生活されていた。タクシーを使いスーパーへ買い物に。地域の人との付き合いも病前通り。入院中のやや不穏な状態は影を潜め、前向きに計画的に、楽しそうに生きていらっしゃった。

 「感情と、注意と、判断が1点ずつあがって、26点になっていました!」と、訪問同行したPTの弁。素晴らしい評価である。でも、ここで確認しておくべくことがあることを感じた。CBAが評価しているものは何であろうか、ということである。この方は、入院中に問題行動があったという。何かというと「他患者さまにお菓子を配る」ことであった。病院としては、これは許可できず、禁止しても続行されたことから、判断力は十分でなかったといえる。しかし、他者と関わる力が高いことがこの方の利点であり、退院後も地域の人々との良い交流の中で社会生活を営み、一人暮らしの続行を可能にしたのは、この力に寄るところが大きい。

 さて、この方がよくなったのは何なのか。元気に一人暮らしをされていた方が、入院中の臥床生活で気分がふさぎこみ、見当識が不確実になっていた。気持ちが落ち込むことで、的確に判断できなくなることもある。注意も不十分で、骨折後の身体を駆使できず転倒リスクもあった。高齢者の場合、こうした状態から認知低下が進んでしまうことは少なくない。この方の場合は、家に帰った後、もう一度自分の生活を取り戻すことに積極的に挑むことができた。その中で気持ちが充実し、行動は計画的にかつ慎重に行った。温かく迎え入れてくれた地域の友人たちとの心の交流もあり、生活を楽しいと感じ、意欲的に取り組むことができた。その中で感情の活性化、注意力の向上、適切な判断力の回復がみられた。MMSEやCAT、WAISなどの認知神経心理学的検査を実施して比較したわけではない。今回の変化を、「高次脳機能が改善した」と表現することに違和感のある人もいるかもしれない。しかし、環境適応能力、工夫しうまく生きていく力が向上していることは間違いないと思う。生活期で私たちがとらえていかなければならないのは、患者さまのどのような力であろうか。まさにこの「生きていく力」なのではないか。難しいことばや数値で語るのでなく、この生きていく力こそ、人の持つ高次な脳の力であり、生活期に関わる私たちが把握していかなければならない力であるはずだ。

 CBAは、高次脳機能障害の評価を試みるが、あえて「機能」を測る評価ではないといいたい。人が生活していく力、生きていく力、を評価できる評価表として育てていくことが望まれていることを、改めて感じさせられた事例であった。

 

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