CBAを理解しよう

書籍「日常生活から高次脳機能障害を理解する-認知関連行動アセスメント 」に対する

書評を掲載します!!

書評

日常生活から高次脳機能障害を理解する-認知関連行動アセスメント  

種村 純(川崎医療福祉大学、言語聴覚士)

 認知行動アセスメント(CBA)は高次脳機能障害における言語や視空間認知のような巣症状、本書では個別的認知能力、ではなく、全般的な精神機能を評価する尺度である。本書はこのCBAを医療機関の多職種に導入するためのテキストである。高次脳機能の知識、CBAの背景理論、CBAでは取り上げていない個別的認知能力の解説、評価尺度使用の実際、障害内容別・発症からの経過時期別の成績、各職種の視点及び事例を中心とした実際のデータの解説からなっており、著者の経験を生かした丁寧な解説されている。大脳の広範な領域の機能障害は症候学的には急性期の意識障害、亜急性期の通過症候群、慢性期の認知症が挙げられる。それぞれに評価尺度が作られているが、今回の尺度の特徴はリハビリテーションの立場から回復の水準を知り、生活障害との関連を予測することを目的としている点である。内容を見ると意識、感情、注意、記憶、判断、病識に6分野である。このうち意識、感情及び注意の前半3項目が基盤的認知能力、記憶、判断および病識の後半3項目が統合的認知能力とされる。

 症候を記載するための臨床的なチェックリストであればこれらの領域について数十項目が必要であろうが、本アセスメントは医療関係の多職種の間で共有するためのツールであり、わかりやすさが追及されている。臨床症状は本来、質的評価であるのに、それぞれの機能水準を得点化し、さらに各領域の得点を合計し、総合得点により重症度を表示することに臨床家は違和感を覚えるかもしれない。高次脳機能障害とは病巣の分布によって異なった症状を独立に示すからである。この点について本書では一次元尺度化の根拠としてニューヨーク大学ラスク研究所神経心理ピラミッドと山鳥の情・知・意の階層を取り上げている。ラスク研究所は歴代先進的な認知リハビリテーションを展開してきた。CBAも最初の意識から最後の病識に向かってこれらの文献と整合性のある項目配列になっている。したがって項目得点は覚醒、感情は相対的に高得点がとりやすく、後の項目はとりにくく、総合得点は回復の総合的指標の意義を持ちうるのである。著者の病院ではこの尺度を職種間連携のために用いている、ということだが、医師、OT、ST、臨床心理士以外の看護師、介護士やMSWがとらえている情報がコンパクトな形で提示されることは、チームにとって有用であるし、対象者の総合的理解に通じるであろう。実際の事例の経過データも示され、リハ訓練以外に看護師による病棟ADL訓練の成果が強調されている。この点は従来の評価法にはない有用性である。

 障害に対して言葉や会話による介入の成果も記載されている。失語症以外の高次脳機能障害、特に右半球損傷者及び前頭葉損傷者に対する言語聴覚療法の意義を明らかにしているともいえる。具体的には感情障害に対して興味ある会話を展開することでリハビリテーションに対して積極的態度を形成する、左半側無視例に対して目標や道順の確認を行いながら歩行練習を行う、などである。発症初期の基盤的認知能力の回復には自然回復の要因が大きく作用するが、統合的認知能力については病院という保護的環境から社会活動への段階的移行が不可欠である。本書で紹介されている支援方法は退院後の生活への橋渡しとして医療機関内で対応すべき事項である。本書は著者の所属施設におけるCBAを用いた高次脳機能障害に対する多貴重な職種連携の成果ともいえよう。

(総合リハビリテーション、Vol.44 No.12、2016)

書評

日常生活から高次脳機能障害を理解する-認知関連行動アセスメント  

渕 雅子(九州福祉栄養大学、作業療法士)

 

 書評を書くのは大変気を遣う。なぜなら、褒めないわけにはいかないからである。しかしそんな気を遣うことを全く考えもせず、そして「一気に読み終わった!」というのがこの本最初の感想である。こんなに簡潔に高次脳機能障害を表現している本はあるだろうか?こんなに項目建てがクリアな本はあるだろうか?そして、著者森田さんがいつも最も大事にしている生活から高次脳機能障害を見るというぶれない視点をこんなに表現できている本はあるだろうか?

 まず手に取ると、カラーで美しく、優しい体裁に心惹かれた。初心者向けかと思いきや、なんと最初にフィニアス・ゲージの話から始まる。私のお師匠さんで、世界的な前頭葉の研究者である久保田競先生は、早くから彼の存在を高次脳機能障害の究極である、前頭葉機能の理解のために紹介した。そのような斬新な思考からこの本が始まる。しかし、高次脳機能障害を理解するためには外せない基本項目で1章が構成されている。次の2章では高次脳機能障害をみる視点として、大変重要な2つのモデルを紹介し、並列では理解できない立体的な高次脳機能障害の見方を、さらに3章と共に構成している。

 そして何よりもこの本のトピックスである、認知関連行動アセスメント(CBS)について4章で紹介している。生活から高次脳機能障害をみる視点を取り入れた本もないではないが、本当に日々患者さんと接し、理解したい、どうにか関わりたいと模索した長年の熱い思いを知っているだけに、こんなに臨床的でかつシンプルにまとまった評価視点ができるものなのかと感心した。そして、この紹介で終われば、「こんな評価もあるのね」でおしまいであるが、評価視点に加え、さらに介入視点の豊富さに驚かされる。この本の分量の半分は介入についてである。

介入には大変個性が出たり、独善的であったりするが、森田さんが重要視している関りである多職種との協働について、大変よく構成されて書かれている。機能に焦点を当てた関わり(5章)、それぞれの専門職が責任を持たないといけない関わり(6章)、そして生活障害だから外せないチームでの関わり(7章)、そして最も大事な事例から見ること(8章)、最後はQ&Aとしながらも、日々様々な人から投げかけられる、しかし最も声を大にして森田さんが言いたいことを、この本をまとめるかのように書かれている。

 これだけの膨大な内容を、見た目にもわかりやすく、優しく書かれているこの本は、一読ではなく、臨床にしっかり役立ててほしい一冊である。

(作業療法ジャーナル、2017、5月号)

 

CBAの使用は問題提起から始まる      

 

金井 香(伊勢崎福島病院、言語聴覚士)

 

 CBAに興味をもたれた方は、高次脳機能障害を理解したいという欲求をもった方だと仮定しています。患者さんを前に悩む臨床家、教育者であるか、あるいは当事者やご家族であるかもしれません。そのすべての方に、CBAが有用なツールとなることを願ってやみません。

ただし、とりあえず患者さんの高次脳機能をなるべく簡便な方法で測定したい、という動機をお持ちの方にはおすすめしません。CBAは、あくまで行動観察からの評価という形式をとっているため、評価者の知識や物の見方、考え方が結果に反映されるリスクを常にもっているからです。

 さて、それでもCBAを作った理由は、とてもシンプルでした。患者さんの個別の高次脳機能障害の存在をつきとめられたとしても、それらが日常生活にどのように関連し合って生活上の問題行動を引き起こしているのか、どのように人格に影響を与え、病前のその人ならばするはずのない判断をしてしまうのか、アプローチするための障害構造がわからなかったからです。

 たとえば注意障害があり、ほかにも自発性低下、記憶障害、半側空間無視、構成障害、拮抗失行がある、とわかったからといって、すごいスピードで車椅子駆動し左側の壁に激突しそこねて左手にすり傷をつくりながらも、気づかずに再び突進、忠告に対してあっけらかんとして「気をつけます」と答えたそばから、ふたたび突進して左壁にぶつかりそうになる患者さんの不合理な行動の原因が、わからなかったからです。

まだ言語聴覚士になりたてのわたしは、左半側空間無視がおもな原因だろうと考え、左側に注意をむける練習をおこないました。注意障害や作業記憶へのアプローチもおこないました。長期間訓練して練習したことはできるようになりました。しかし日常生活では、その方の行動にはほとんど変化がありませんでした。一つの大きな原因を見落としていたのです。その方は、ぶつかってけがをすることが恐くなかったのです。

 

 CBAは、分析のためのツールとなるように作りました。ですから評価者は、検査バッテリーの数値だけでなく、様々な角度からみた患者さんの情報を集めなければなりません。自分が持っている情報だけでは評価は始まらないのです。PT,OT,Dr,NS,SW,ご家族、同室の患者さん、それぞれが異なる視点からの患者さんに関わる重要な情報をもっています。それらをパズルのようにはめこみ、部分を形にし、全体がぼんやりと見え始める、そんな地道な作業を繰り返します。

CBAの評価の視点             

森田 秋子(鵜飼リハビリテーション病院、言語聴覚士)

 CBAの評価領域は、意識、感情、注意、記憶、判断、病識、の6領域となっています。これらの視点を選択した背景として、ラスク研究所で用いられる「神経心理ピラミッド」、山鳥重先生の提唱する「行動・認知モデル」、の考え方を参考にしています。詳しくは書籍を参照してください。

 6領域の基本的な視点は以下の通りです。

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれの項目を、1~5点で評価します。重症度評価のポイントは以下の通りです。各項目の段階評価は評価用紙を参照してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認知・行動チェックリストについて     

森田 秋子(鵜飼リハビリテーション病院、言語聴覚士)

 CBAの前身となる行動評価で、2011年に開発しました(脳卒中33:341–350,2011)。CBAと同様、意識、感情、注意、記憶、判断、病識の6領域から成っていますが、それぞれの領域に6個の下位項目があり、全部で24項目の評価が必要となります。それぞれ、3、2、1、0点の4段階で評価し、合計点は72~0点となります。

 下位項目に評価の視点が明確に示されている点で、CBAよりもつけやすい、という意見もあります。また、高次脳機能障害を理解するうえで必要な項目がおさえられているため、視点の整理もしやすいというメリットがあります。一方、24項目の評価を行うには時間がかかり、実用性という観点からは低いと言わざるを得ません。すべての項目を評価し合計点を出すには、手間と時間を要します。また、合計点を出しても、72点満点となっているため、重症度のイメージがつけにくいことも、デメリットであるといえます。

 より簡便で実用的な行動評価を目指して、CBAが開発されました。高次脳機能障害が専門でない職種などにとっては、簡略化された評価となっているために使いやすいことが利点です。また、総合点を出し重症度をみるためには、CBAが便利です。 一方、より高次脳機能障害を深くとらえたい人にとっては、認知・行動チェックリストが有用です。認知・行動チェックリストとCBAは、行ったり来たりしながら使用することで、互いを補完し合える可能性があると思われます。CBAに興味を持って下さった人は、ぜひ認知・行動チェックリストもご覧になってみてください。

認知・行動チェックリストの項目

意識・易疲労性   1.覚醒、2.反応・内容、3.見当識、4.易疲労性

自発性・感情      1.意欲・発動性、2.興味・関心、3.感情、4.感情制御

注意        1.選択、2.強度・持続、3.分配・変換、4.葛藤条件監視

記憶        1.近時記憶、2.遠隔記憶、3.展望記憶、4.手続き記憶、

状況判断      1.危険判断、2.自制的判断、3.社会的状況判断、4.対人的状況判断

病識・適応     1.病気理解、2.障害理解、3.能力理解、4.環境適応

 
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