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​担当者:森田 秋子・菱川 法和

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CBA日記

類人猿診断に思う


  性格診断の1つの手法である「類人猿診断」を、リーダー研修のテーマに用いて取り組み、いろいろ興味を感じたので、感想を述べたい。

 類人猿診断とは何か。問1.感情を表に出すか㋐、出さないか㋑。問2.物事を追求し成果を上げることを望むか㋐、安心・安定を維持することを望むか㋑。この、たった2つの問いに答えることで、すべての人を4つの類人猿に例えたタイプに分類する。問1.2.の順に、㋐㋐(感情を出し、成果を求める)はチンパンジー型。㋐㋑(感情を出し、安定を求める)はボノボ型。㋑㋐(感情を出さず、成果を求める)はオランウータン型。㋑㋑(感情を出さず、安定を求める)はゴリラ型、とのことである。

 「感情を出すか出さないか」と「成果を求めるか安定を求めるか」とう2択は単純であるが、人の気質の中で際立った特徴として、比較的誰もが「自分はこうだ」と断定しやすく、たった4つの分類でありながら、血液型分類などに比較して自分のタイプに納得感を得やすい。よく考えたものだと感心した。

人がこの2つの問いに答える時、生まれ持った気質に沿って選択することになると思うが、いくつかの場合そうとは限らない。よくあることだが、本来は優しい内気な気質であるのに、長男として生まれ豪放磊落であることを求められ、自分をそのような人間だと思い込み育った場合。青年期になって実は自分の本質はそうでないことに気づく。気づく前はチンパンジー、あるいはオランウータンと診断するが、気づいたあとは、自分はボノボ、あるいはゴリラに近いと感じる、などが起こり得る。

 また、気質の傾向は成長の過程で変化していく。成功体験、失敗体験が人を変えていく。おそらく成功は本来の気質を強めるが、失敗はへこたれて自分を変えようとする力に結びつく。私は、感情表出、成果達成追及が明確で、典型的なチンパンジーであるが、チンパンジータイプはどんどん行動するので、そして大概は失敗するので、自分を変えていかざるを得ないことが多い。失敗に傷つく自分を見て、自分はそれほど改革タイプではないかも、それほど感情が激しいタイプではないかも、と感じることもあるだろう。人の気質は、なだらかな延長線上にあり、同じ人に両方の要素があることも当然あるので、完全に分類することはできない。特に自分が変化している場合には、自分の本質がどこにあるのか迷うこともある。そのような状況では診断は難しい場合がある。

 さて、CBA書籍のQ&Aのページに、高次脳機能障害と性格について記した。人の個人差は、古くから 「知・情・意」という3側面に分けられおり、知的な機能を扱う「知能」、情・意的な機能を扱う「性格」「気質」などの語が使われる。また、「パーソナリティ」という語は「その人特有の個性を表す」場合に使われ、 知・情・意のすべてを含むという。気質はより生得的な特徴を表し、性格は環境要因によって形作られたものが含まれる。

 高次脳機能障害者の行動上の課題が、障害によるのかもともとの性格の影響なのかわからない、という質問を受けることが多い。高次脳機能障害により、「知・情・意」のすべてに影響を受けるので、「知能」の低下や「気質」の先鋭化などが生じ、複雑な変化を示す。それでも、生来の気質や習慣の影響を受けた行動が多いことを、しばしば感じる。もともと几帳面である、必ず確認する、などの習慣を持っていた人は、障害を生じた後も強みを発揮することが多い。もともと雑でずぼらだった人は、その影響を受ける。「もとから、こうだったです」とご家族がおっしゃることも多い。ただし、雑でずぼらでも何とか社会で通用していた人が、総合的能力が低下し通用しなくなる、という変化を生じていることも多い。

 人は、持って生まれた気質を土台としながら、環境の中で経験を重ね、「こうした方がよさそうだ」と思う方へ行動が変容していき、性格が形成されていく。より十分な情報をもとに客観的な内省の上に自己体験を生かしていくことで、持って生まれた気質を発揮しながらより良い人格が育成され、成熟した人格者としての大人になっていく。これは、大変苦しい過程である。大人になりきれない、弱い、ダメな自分と向き合い、その自分を受け入れることには勇気がいる。痛みを伴う。20代には自己意識と周囲との葛藤の軋轢の中で、もがき、痛み、傷ついている。

 今、私の周囲にいる30代のリーダーたちは、己に向き合い、思慮を重ねながら、次々に成熟の時を迎えている。その言動や行動からそれがうかがえる。部下の気持ちを推測、配慮できるようになり、厚みのある指導力を備え始める。彼らに、道が開かれるきっかけはどこにあるのか。謙虚さ、潔さ、がキーワードではないか。そこにこそ、徳や倫理観を備え、高潔な人格を持った大人への成長の扉が開かれる。

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