神奈川県臨床作業療法大会に参加しました

第2回神奈川県臨床作業療法大会の、「多職種連携、高次脳機能障害の症例を通して-先輩たちからの提言」というシンポジウムに、STのシンポジストとして招いていただいた。高次脳機能障害をめぐり、OTとSTのシンポジストによるディスカッションを行うという、意欲的なテーマを設定してくださった遠藤陵晃大会長、そしてOTのシンポジストとして質高く、そしてSTとの連携について協調的な発言をしてくださった早川裕子先生に深く感謝したい。
90分のシンポジウムは、はじめにOT、STのシンポジストから、高次脳機能障害をみる視点について提言を行ったあと、若手のOTによる事例発表があり、事例検討を軸にディスカッションを行う、という形で行われた。早川裕子先生は、「高次脳機能障害マエストロシリーズ」の著者であり、高次脳機能障害に精通したベテランの作業療法士である。今回はじめてお会いしたが、気さくで穏やかでそれでいて論法鋭い理論家であり、全体としてはOTらしい行動と生活を軸にした患者さんの見方が貫かれていらっしゃる、とても素敵な方だった。私が平均的な言語聴覚士ではないので、聞いている方たちがOTの視点とSTの視点の違い、というような理解にはつながらなかったと思うが、早川先生と私が事例を通じて語り合う様子を見ていただいたことは(OTとSTというよりは、急性期セラピストと回復期セラピストというような立ち位置での発言になったが)、多職種連携の観点からもよかったのではないかと思う。
さて、高次脳機能障害をめぐる作業療法士と言語聴覚士の連携は、長年関心を持ってきたテーマである。最近の若者たちは、ぶつかり合うということは少ないのかも知れないが、私はよく議論し合った。それぞれの立場を主張しけんかになったこともある。そのくらい、すぐ近くにOTがいた。そして、教えてもらったこともたくさんある。今の私のリハビリテーション観が培われたのは、一緒に歩んできた多くのPTやOTのおかげにほかならない。
今回のシンポジウムでは、日ごろ考えるOTとSTの視点の違いについて、私見を述べた。OTは、行動の中から高次脳機能障害をみつけることが得意で、行動を軸にとらえ、「この人何ができるかな」「まず何からやってみよう」など と発想できる点を尊敬している。STは、まず機能障害を先におさえたいと考える傾向がある。まずこの検査をやってみたい。何点くらいかな、何点なら何ができる、という順番で考える。この考える方向性の違いは、2職種の特徴だと感じている。OTであれSTであれ、聞いている人を納得させる筋の通った意味のある情報を発信するには、経験と知識を蓄積し実力をつけていく必要がある。
OTとSTが特徴を活かし合えれば強いコンビになれるが、お互いをよく理解し合っていないと、うまくいかなくなることもある。OTとSTがぶつかるきっかけになりやすいのが、「失語症者にMMSEを実施するか」というテーマである。この問題に対する2職種の立場についてもコメントした。失語症があると、記憶や注意は保たれていても、言語機能が損なわれているために、質問に答えられないことがある。例えば、今日が何月何日かわかっていても、言葉では答えられない。そのため、STは失語症者に言語を用いた知能検査であるMMSEを実施することに、強い拒否感がある。軽度でも失語症があれば、言語を用いない動作性の知能検査を用いるべきだと考える。周囲のOTが、失語症者にMMSEを実施しているのをみると、批判を感じる。近しい関係にあれば「やるべきでない」と意見を言うし、距離があれば遠くから批判する。下手をするとわだかまりになっていく。しかし、失語症者にMMSEを実施するOTは多い。
私も若い時には、多くのSTと同じように考えていた。言語機能にハンデがあるなら、言語を用いずに残存認知機能を評価すべきだ、と考えた。このことは、CBAを開発した大きな動因にもなった。しかし、長年OTと一緒に働くうちに、OTが失語症者を含めてMMSEを実施したいと思う気持ちを理解するようになった。言語検査を担わないOTにとってMMSEを実施することは、失語症者の言語の様子をうかがう絶好の機会となる。そもそもMMSEの開発者であるFolsteinは、MMSEを、失語症を含めた高次脳機能障