top of page

CBA日記への投稿をお待ちしています...。

​担当者:森田 秋子・菱川 法和

連絡先:E-mail cbaninchikanren@gmail.com

詳細はこちら

CBA日記

高次脳機能障害学会に参加しました


 11月は機能評価準備に2つの学会が重なり、老体の体力は戻る暇がない。しかし、今年の高次脳機能障害は心に残る、価値のある学会となった。

 日本高次脳機能障害学会は、その昔日本失語症学会という名前で(2003年に現在名に変更)、1977年失語症研究の中枢であった伊豆韮山カンファランスを母体に設立した。当時の若いSTにとっては(私もその一人)、「遠い憧れ」「手の届かない星」みたいなものであった。先日も記したが、30代を子育てに追われた私にとって、失語症学会は結局手が届かなかった。40代になって、はじめて高次脳機能障害学会で発表した時(しかも深層失語事例の書字障害をテーマ!)、ようやく自分がSTになれたような気がして、感慨深かったのを思い出す。

 今も敷居は低くない。リハケア合同研究大会や回復期リハ研究大会であれば、若手にチャレンジさせられる、日本言語聴覚学会であっても中堅のステップアップに、と位置付けられる。ところが高次脳機能障害学会はそうはいかない。まず、発表する十分な価値のあるデータがそろっていること、そしてその意味を伝えられるべく過去の研究の整理ができていること、そして1つの研究として科学的で筋道の立ったストーリーを作れること。つまり、求められるレベルがちょっと違う学会なのだ。失語症なり高次脳機能障害なりを真に理解していなければ、発表できない。高い敷居をまたぐことはできない。

 鵜飼リハに来て3年。リハケア大会、回復期リハ研究大会、嚥下学会、ST学会と、STの発表につなげてきたが、高次脳機能障害学会は最後に残った峰である。昨年12月にある患者さまに出会い、「高次脳機能障害学会で発表できる!」と直感した。担当はCBA書籍執筆者であり、ST副主任の伊藤梓さん。彼女は、例の類人猿分類で自分をゴリラというが、私はそうは思わない。ゴリラだったら、あんなにも(!)、絶対に(!)、自説をまげることなく、納得できるまで、とことん解明し続けたりしないと思う。絶対にオランウータンだ。

 それはともかくとして、今回難しい症例に悩みながら、徹底的な音声の聞き返しと議論と分析の末、事例発表を実現した。私の力だけでは困難で、親友春原則子の力を借りてのことである。一番大きいA会場での発表後、東北大学の松田実先生が手をあげ「貴重な事例を発表してくれて、ありがとう」とおっしゃってくれた時、半年の苦労と努力の時間がむくわれていくのを感じた。

 夜は伊藤さんと一杯飲みながら、STが失語症学会で発表することの重みを語り合った。伊藤さんもまた、「高次脳機能障害学会の発表なんて、夢だと思ってた…」と語った。回復期リハの忙しい現場に流されていれば、ここには来られない。でも、ここに来られるSTでいよう。そのために、引き続きどんな努力が必要か、考え続けよう。

 さて、本学会で、森ノ宮病院のOTの清水健さんが、CBA関連の発表を行った。CBAの前身である認知・行動チェックリスト(本サイトでダウンロード可能)を用いて、FIMとの関連を丁寧に分析している。特に、失語と非失語に分け、非失語(すなわち右半球損傷者)の注意、判断が失語者に対し明らかに低値であったことを示した。すでに知られていること知見であるが、わかりやすい結果であり、CBAデータをもとに示していただいたことには大きな意義がある。共同演者の宮井一郎院長からは、「論文にするように」と言われているとのこと。ポスター発表とはいうものの、高次脳機能障害学会にCBAを登場させてくださった清水さんに感謝した。

 発表後、清水さんと今後のデータ収集について意見交換した。OTやSTが研究のためにデータ収集するなら、6領域24項目の質問から成る認知・行動チェックリストが優れているが、院内で多領域の職種でデータをとっていくなら、6項目を採点すれば済む「CBA」でいくしかない、と私は考えている。CBAを作った時、多くのOTやSTから、「森田さん、こんなに簡単にしちゃあ、意味がなくなっちゃう」と言われた。確かにその通りだ。しかし「CBAにしなければ汎用されない」という直感は、当たっていたと感じている。森ノ宮病院での運用がどのように進むのか、関心はつきない。が、大きな困難が待っていると予測する。

 当院での経験を言えば、施設全体でCBAを運用していくことは並大抵の努力ではできない。その一方、今回の学会で5つの病院のセラピストから、「当院でCBAを使っていきたいと考えている」と声をかけていただいた。簡単ではないですよ、と心の中でつぶやきながら、「ぜひ、頑張ってください」と伝えた。「話をしに来てください」と言っていただいた施設へは、どこへでも伺わせていただく所存である。

 書籍発行から半年、紆余曲折しながら確実に何かが進んでいる。この先にあるものが確固たる形なのか、像を結ばない淡い思いなのか、今はわからない。

 (写真トップは、夜の松本城、酔っ払いながら見たことを差し引いても圧巻の美しさでした。2枚目は森ノ宮病院ポスターの前で、左から、共同演者のリハ医服部憲明先生、発表者清水健さん、私、昨日発表を終えた伊藤梓さん。最後の写真は、中町の小粋な飲み屋さんで、鵜飼リハST飲み会。2日目発表した当院横井秀明STと初めて学会に参加した2年目の柿森ST。横井さんは、純粋発語失行事例のポスター発表でしたが、「本番に強い」の前評判に嘘はなく、見事な発表でした)

最新記事
Archive
タグから検索
bottom of page